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『西方の魔女』東方視察編:5 [『西方の魔女』]

さて、『西方の魔女』第五章をお届けします。
今回のメインは、前章から時間を遡りイシスさんの過去を少々ご紹介です。
因みにスクロールバーは普段より短め・・・つまり内容も他に比べると短いかな(笑)?
それでは、興味のある方は例の如く、続きを読む、からどうぞ♪


ねぇ、どうして 『私』 ではダメだったの?

ずっと 『気心の知れた友人』 として、 『ナイフ使いの愛弟子』 として、
そして 『かけがえのない戦友』 として『私』 は 『貴方』 の傍にいた。

それとも 『私』 が 『貴方』 と同じ 『  』 だったから ・ ・ ・
『貴方』 は 『私』 でなく 『 』 を選んだの?


『西方の魔女』 第五章 ~愛憎~


 ――― その日、ハボックは朝から既に疲れきっていた。

 昨夜は、久しぶりにイシスのために腕を奮って夕食を作り上げ、近況報告と云う名の洒落た会話と共に二人きりで過ごす時間を満喫した。
 そして食後の一杯・・・とばかりに飲み始めた酒に、どうやら少々羽目を外し過ぎたらしい・・・気が付けば、ハボックは何気に酒には弱いイシスに絡まれていた。
 しかしほろ酔い加減のイシスは、ハボックに絡むだけ絡むと終いにはスースーと可愛らしい寝息をたてて寝入ってしまい・・・そんなイシスの幸せそうな寝顔にハボックはため息をつくと、その華奢な身体をヒョイと抱えあげる。
 そうして、普段は決して開ける事のないイシス専用の寝室に彼女を運んで行くと、その細い身体をベッドに降ろし ――― そう・・・そこまでは良かったのだ。
 しかしハボックは、その行為自体が既にいま現在自らが招いた最大の誤算であったことを、その時につくづくと思い知らされてしまっていた。
 ――― ああ・・・まったく『こんな事』になるのなら、自分は無理矢理にでもイシスを起こすべきだったのだ。

 スースーと可愛らしい寝息が、ハボックの耳元をくすぐる。
 (・・・蛇の生殺し・・・って、こう云う時にも使うんだろうか・・・? )
 ハボックは、自らが招いた最大の誤算を前に再びため息をついた。

 そう・・・イシスを寝室のベッドに運び、降ろしたまでは良かった・・・しかしまさか、選りにも選ってそのイシスが、その時になってハボックの首に回した腕を解いてくれない、等と云う事態が起こるとは流石に幼い頃から彼女を知るハボックでも予想外の事態だった。
 勿論ハボックとて、一応はそのイシスの力に抵抗はしてみた・・・しかし、彼女は ――― まあ、無意識ではあるのだろうが ――― ハボックの首に回した腕の力を緩めるどころか、却ってその細くて柔らかな肢体を摺り寄せて来る・・・と云った始末。
 いくらイシスがハボックよりも一回り以上も年が離れており、尚且つ血縁関係にある・・・とは云っても、いま自分を抱きしめてくるその女性は、身内であるハボックにとってさえ、大層 ――― その・・・魅力的だった。
 その結果、ハボックはその凶悪なまでの愛らしさの前に自らの理性の限界を試される羽目に陥り・・・結局、朝までほとんど一睡もできずにいた。
 そして、ハボックのその『理性の限界』を試す元凶であるところのイシスは、と云えば ――― それはもう、ハボックが恨めしくなるほどに ――― 幸せそうな様子でぐっすりと眠っていた。
 やがて何度目かのため息がハボックの口許から漏れると、それがイシスの首筋にかかったらしい。その起きる気配など全くと言って良いほどない彼女が、その時初めて反応を示して身動ぎした。
 そして・・・

 「・・・××××・・・」

 ハボックは、たった一度だけイシスが彼の耳元で愛おしげに呟いた寝言に、身体を強張らせる。
 本当に愛おしげに、その時イシスが呼んだのは、嘗ては彼女の上司でもあった『父』の名ではなく・・・ましてやいま現在共にいる、自分のものでもなかった。
 そう・・・それが、今の彼女の「全て」なのかもしれない。
 故にハボックは、たった一人の身内としてその事にホッとすると同時に・・・しかしモヤモヤとした、言い知れぬ感情を持て余すこととなった。
 そして、その感情の名が『嫉妬』であることを、その時のハボックは正直認めたくはなかったのだ。

 その日、イシスは何かとても大切な事を忘れている自分を思い出すと、嫌々ながらも早朝から目を醒まし『自分を抱き締めている』 ――― 否、むしろこの場合は『自分が抱き締めている』 ――― 相手を目にした瞬間・・・思わず息を呑むと固まった。
 ( ???・・・どうしてジャンがここに・・・!!!??? )
 ハボックの腕の中で、半ばパニックを起こしかけたイシスではあったが、徐々に昨夜の出来事を思い起こす。
 (・・・ええと、そう云えば寮を抜け出して、ジャンのところまで来て・・・一緒に夕食を食べて、それからお酒を飲んで、なんだかちょっとジャンに絡んだりなんかしたあとの記憶が・・・う~~ん、ない、な・・・そのまま眠っちゃったんだっけか・・・?でも・・何故に私はここでジャンと一緒に寝てる訳・・・??? )
 イシスの抱いた疑問の、その答えを期待すべき相手は、しかしウトウトとまだ夢現の世界を彷徨っているらしい・・・その、自分が嘗て愛して止まなかった『あの人』にそっくりな寝顔を、イシスは苦笑と共に見守る。
 (・・・ほんと・・・髪の色以外は、厭になるぐらい『あの人』にそっくりだな・・・)

 イシスは、彼女の上官で、同時にかけがえのない戦友、そして『姉』の夫でもあった『あの人』の事を思い出す。
 彼女の記憶の中、今でも決して色褪せる事などない『あの人』は、光の加減で翠色にも見える蒼瞳をした背の高い人だった・・・ジャンはその容貌を色濃く残しながらも、同時にイシスの『姉』でもあった女性と同じ ――― それはまたイシスと同義でもあったが ――― 髪の色を有しており・・・
 イシスは『それ』が堪らないほど嫌で・・・また同時に、とても愛おしくもあった。
 そう・・・イシスにとって『姉』と云う存在は、幼い頃から『羨望』と『憧憬』、そして『近親憎悪』にも似たコンプレックスを刺激する存在だった。しかしそれは、決して外見的なものからくるものではない ――― 何故なら、自分と『姉』は一卵双生児であり、見た目にはまったく区別などつかない存在だった ――― 強いて違いがあるとすれば『姉』は知識を吸収しそれを発展させる事に秀で、自分は自らの身体能力を高めそれを体現する事に秀でていた。
 故に『姉』は両親の許で研鑽する事を望まれ、自分は父方の伯父で軍内部に於いては嘗て名門とも謳われたハミルトン家の養女となる事を求められた。
 勿論イシスを引き取ったその伯父は、彼女が軍人になる事を最初から望んでいた訳ではない・・・寧ろ、彼女が軍に志願する事に対し難色を示しさえした。しかしイシスが軍人になった時、彼がそれを一番誇らしく思っていた事を彼女は知っている。
 そして、イシスはそこで自らの『運命』に出会う・・・

 (・・・と、まあ感傷に浸るのはこのぐらいにしてと・・・はて? 私ってば、何かとても大切な事を忘れていた訳だけど・・・それって、一体なんだったけ? )

 イシスは自らのその紅潮した頬の熱さを無理矢理意識の外へと追い遣りながら、僅かな逡巡の後、う~む、と思索を巡らせ・・・それからハタと忘れていた大切な事を思い出す。そして、がばりと勢いよく起き上がり ―――

 「あ~~~~っ、視察!!!い、いま一体何時なのよ!!!???」

 ――― と、絶叫した。
 その叫びは、ハボックの寝ぼけた意識を覚醒させるには十分すぎる音量を伴っていると同時に、今まで同衾していた相手が自分の叔母である、と云うだけではなくここ-東方-へ視察を目的として訪れていた西方司令部副司令、イシス・ハミルトン中将である事を思い出させるには十分だった。

 やがて彼女は慌ててベッドから起き出すと、未だに眠気が残る様子で欠伸を噛み殺す自分を尻目に、手早く身支度を始めた。
 「イシス・・・? あの、まだ6時なんスけど、視察って一体、何時からなんスか?」
 ハボックは、ドレッサーから着替えを取り出すイシスから視線を外すと、ベッドサイドの時計に目を遣ってから嘆息する。
 「0900から・・・ってか、ジャン? 悠長にそんな所で見てないで、早く支度してよ! 私は一回宿舎に戻らなきゃいけないんだから。」イシスはそう言って言葉を切ると、次には今までとはまた違った意味の禍々しいまでの笑みを浮かべて続ける。「・・・それとも何? ジャンは、私と同伴出勤でもしたいのかな?」
 「そ、それは・・・やっぱ拙いんじゃないかと・・・」
 ハボックは、その後に起きるだろう光景を思い浮かべ、冷や汗混じりに呟く。
 「でしょ?・・・なら早く支度なさい。」
 「支度って?」
 「決まってるじゃないの。」彼女は、今度は極上の笑みを浮かべると胸を張ってその主張を続ける。「清清しい一日のはじまりは、きちんとした食事から、っていつも言ってたでしょ?」

 (・・・食うんだ、やっぱり・・・>汗 )

 ただし、どんなに急いでいようと彼女はやはり自分が覚えている昔のままのイシス・ハミルトンその人であり・・・ぶっちゃけ、しっかり朝食を食べていく事は忘れなかった、らしい・・・
 その後、ハボックの作った朝食を平らげ、彼女はにっこり笑って『また、あとでね?』とハボックの頬に軽くキスすると、軽やかな足取りでその場をあとにした。
 それが、7時ジャスト・・・自分が出勤するまであと1時間はある・・・ハボックとしては、このまま二度寝をしたいところであるが、勿論その場合、今度はいつ目が醒めるかは保障できず ――― 結局ハボックは、そのまま眠い目を擦りながら出勤する羽目となった。

                   『西方の魔女』 第五章 ~愛憎~ END 2004.6.30. 脱稿


<『なかがき』と云う名の言い訳>

 第五章は、ちょっとイシスさんとハボックの『両親』について言及してみました。
 ・・・ええ、イシスさんとハボックさんは、そう云う関係(爆)です。
 ちょこっと複雑な家庭環境だったりするのですが・・・今後の展開にソレがどういう風に影響してくるかは・・・『秘密』です(笑)。
 さて・・・次の第六章は、再び西方組の視察での一幕になります。ダイアン准尉の受難、と見せかけて実は・・・?と云うお話になるのでお楽しみにっ♪
 
 
 因みに、6月に入り『西方の魔女』系列の「Shall we dance ?」の閲覧数が100を超えました♪
 ある意味『オリジナル』に近い設定のあの作品が、こんなにも多くの方の目に留まったのかと思うと嬉しい限りです!
 まぁ、実質的にはその半分くらいの方にしか読まれていない可能性は大ですが・・・(苦笑)
 で・・・一応、閲覧数100超え記念として、特別にリクエストを受け付けます♪
 『西方の魔女』関連で、このキャラのこんな様子を読んでみたい!と云うリクエストがありましたら、下記のWeb拍手をポチリと押して、コメントにリクエスト内容をお書き下さい。
 リクエスト受付期間は、7月15日までとします。
 コレで、ひとつもリクエストがない場合、かなり哀しい状況といえますね・・・(><)
 それでは、リクエストをお待ちしております m(_ _)m

     http://webclap.simplecgi.com/clap.php?id=isisu

 *感想などありましたら、ポチリと上記をクリックして下さい。おまけのsssが表示されます。


2007-06-01 23:45  nice!(0)  コメント(0) 

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