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『西方の魔女』東方視察編:7 [『西方の魔女』]

恒例(?)月一連載とでもいいましょうか?『西方の魔女』第七章をお届けします。
今回は東方代表ブレダ少尉と西方代表ダイアン准尉の頭脳対決...みたいな感じのお話になりました。
つまりコレが、イシスさんがダイアン准尉を「連れて来た目的」であり、「是非やって欲しい事」だったりします。
因みに、Web拍手の『閑話休題』とも微妙にリンクした内容になっていたりします(笑)。
それでは、興味のある方は「続きを読む」からどうぞ♪


本当に欲しかったのは、一体なんだったんだろう?

『西方の魔女』第七章

~ 頭脳ゲーム(The Game)~

ブレダ少尉 VS ダイアン准尉  将棋対決の行方


 「王手!」
 自慢げなニヤニヤ笑いと共に、ハイマンス・ブレダ少尉が目の前に座った同僚にそう宣言する。
 「・・・むっ?」
 対するヴァトー・フォルマン准尉が、腕を組んだまま微かに眉を顰め唸り・・・やがてため息を吐いて腕を解くと一言、『負けました。』と呟いた。
 「フッフッフッ・・・これで俺の全戦全勝だな♪」
 「・・・ですな。やはりいくら基本の型を憶えても、その場の展開を読まなければ勝てない。そう言う事でしょう。」
 ファルマンはそう言って、盤上での経過を思い出すかの様な素振りで駒を一つ一つ元へと戻していく。

 その日、穏やかな昼休みの談話室でブレダは、ファルマン相手に『将棋』をしていた。
 しかしいつもとは違いその周りには、ギャラリーはいない ――― と云うのも、普段は居る筈の下士官達が揃って午前中の疲れを引き摺り、休憩時間にダウンしている(第五章参照:笑) ――― からであり、理由は推して知るべし・・・であった。
 ブレダはファルマンが、検討しながら駒を元へ戻していく様子をつまらなそうに眺めながら『刺激が足りない』と云った様子でため息を吐くと、頭の後ろで腕を組んで天井を見上げるようにして身体を反らした ――― その時・・・

 「へぇ~、なんだか面白そうですね? ――― 自分にも教えて頂けますか♪」

 突然ブレダの逆さまになった視界に、楽しげな声とそれを発した紅茶色の髪を有する青年の笑顔が飛び込んできた。
 「・・・!? うわっ!!」
 一瞬の戸惑いの間が空き・・・ブレダは後ろへとバランスを崩しかけ、慌てて態勢を立て直す。そして改めて背後を振り返った。
 「驚かしちゃいましたね、すみません。」
 そう言いながら、ブレダの背後に立った未だ幼さを僅かにその面差しに残した青年が ――― にっこりと微笑んだ。

 「・・・・・・え~と、確か・・・? ダイアン、准尉・・・だったけか?」

 ブレダはその青年が浮かべた表情に、思わず『可愛いかもしれない』と・・・一瞬でも思った自分に呆れながら、昨日の朝の一連の出来事を思い出し・・・最後には僅かに顔を顰めた。
 その脳裡に、大佐が不用意に差し出した『焔』に対して豹変した中将の反応と、その後の自分の身に起きた『拘束』の記憶とが一気に甦る。

 ――― そう、あの時ブレダの背後を難なく取って、予想以上に堅い『拘束』を作り上げた相手・・・それが確かにいま現在、ブレダの目の前でニコニコと親しみやすい笑顔を浮かべている青年だった。

 「そうです。先日は突然『あんな事』になってしまって・・・申し訳ありませんでした、ブレダ少尉。」
 青年-フィリップ・ダイアン准尉-は、どうやらブレダの表情から、昨日の経緯を思い出したのだろう ――― 困った様な笑みをその口許に浮かべると、謝罪するようにぺこりとお辞儀した。
 「・・・っと、いやっ、すまん。ありゃ~うちの大佐の明らかな判断ミス、ってやつだし。だいたい、アレがお前の仕事だろ?」
 ブレダはダイアン准尉の丁寧な対応に、明らかに顔に出ただろう自分の失態を思い返すと、再び慌てたように顔の前でブンブンと手を振った。
 「そう言って頂けると恐縮です。」
 ブレダの答えに対して、ダイアン准尉はホッとした様子でそう言うと、再び誰もが人好きする様な柔らかい笑みを浮かべた。

 「 ――― で・・・教えられるのですか、ブレダ少尉?」
 ダイアン准尉が見せたその笑顔に、思わず固まったような姿勢で見惚れているらしいブレダに対し、今まで無言で成り行きを見守っていたファルマンが声をかける。
 その声に、漸くハッとした様にブレダの硬直が解けた。
 「あ・・・ああ、いいぜ。ちょうど暇してたし、俺等でよければ教えるぞ。」
 「・・・俺等?」
 「そっ。俺とこいつで、だ。」
 戸惑った様なダイアン准尉の反芻に、ブレダはニヤリと笑って自分と背後のファルマンとを指差す。
 「面倒な基本説明はこいつ ――― で、それを元に俺が実際の駒の動きを説明してやる。」
 ちゃっかりと自分に説明を任せてきた上官に、ファルマンが『面倒な基本説明って、どう云う意味ですか、それは・・・』とぶつぶつと文句を零すのを、ブレダはあっさりと無視する。
 そしてダイアン准尉には、自分の前の椅子に座るよう手を振り合図を送った。

 「 ――― ところで、ダイアン准尉。貴方は『チェス』はご存知ですか?」
 さて説明を・・・と云った段階に入って、急にファルマンがダイアンにそう質問した。
 「『チェス』ですか? ――― ええ、勿論。」
 「では、どの程度?」
 「 ――― どの程度・・・と言われると、ちょっと説明に困りますが・・・まぁ、それなりに ――― 強いですよ。」
 ファルマンの質問に答える相手は、時々まるで何かを警戒するよう、またその答えに逡巡するような素振りを見せながら返事を返す。
 「成る程。では説明も基本的な駒の動きだけで、後は何とかやれそうですな。」
 「・・・ええ、多分。」
 「ああ、准尉。ファルマンの奴の御託はあんま気にすんな ――― 要は『チェス』と『将棋』じゃあ、ある種の駒の動きが同じだったりする訳よ・・・それが言いてぇだけなんだからよっ。」
 ダイアン准尉の答えに、ファルマンが満足そうに頷くのに対し、その様子を見ていたブレダがげんなりとしながらそう補足する。
 その説明に相手は『そうなんですか?』と、なにやらホッとしたような素振りで笑顔を見せた。

 「では、まずは簡単に盤から説明しましょう。『チェス』は縦横8つのマスからなりますが、将棋は9つのマスからなります。右上から一から九、右から左に向って1から9と表現します。それから駒の置き方ですが、先手から見て手前の一列目、つまり九ですが、ここから順に並べます。まずは九の5に王将、つまり『キング』ですな。それを中心に、金将、銀将、桂馬、香車が左右に。二列目、2の八に飛車、8の八に角将。そして三列目の七には、歩兵が9枚並びます。」
 ここまでは、大丈夫ですか? と、ファルマンはそこで一息ついた。
 そのファルマンの説明に沿うように盤上にはブレダが駒を並べていく。
 そのブレダの手元を真剣な表情で覗き込みながら、ダイアン准尉が頷き、そしてその駒の並びを目で追う。

 「 ――― では次に駒の動かし方ですが、歩兵は前に1つだけ進め、香車は前に好きなだけ進めます。桂馬は二マス先の右か左に進めます。ただしこの3つの駒は、前に進めても後ろには戻れません。銀将は前の3ヶ所と後ろの2ヶ所に一マス、金将は前に3ヶ所、左右2ヶ所、後ろの1ヶ所に一マス。角将は左右斜めに何処でも、飛車は縦横なら何処でも進めます。そして王将ですが、これは前後左右、斜めにも一マスなら進めます。」

 そこでファルマンは再び一息ついてダイアン准尉の表情を伺う。その当の青年は、ブレダ少尉の手元を見つめながら、成る程と云った表情を浮かべてはいたが、まったく混乱した様子がない。
 その姿からは、今まで自分が何度か説明してきた相手には見られない余裕の様なものが伺えた。

 「 ――― 因みに、動きたい位置に相手の駒がある時はその駒を取って前に進みます。また自分の駒のある所には進めませんが、桂馬だけは自分の駒も相手の駒も飛び越えて進むことが出来ます。それから『チェス』とは違い、将棋は自分の盤上の駒が敵陣内、つまり1から3段目に入ると駒を裏返して能力アップさせる事ができ、駒の表記も変わります。」

 「なんだか、段々混乱してきそうですね?」ファルマンの説明に、そう言って口許に苦笑を刻んだ当の青年のヘイゼルの瞳はしかし、キラキラと興奮に輝きを放ち、その正面に座るブレダの心を直撃した。「 ――― え~と、でも平気ですよ。続けてください♪」
 ダイアン准尉の呟きに、説明を中断していたファルマンは、先を続けるように促す青年の言葉に頷くと言葉を継いだ。

 「さて、この次は駒が成った時の名称と動きですが・・・歩兵は【と】(ときん)、香車は【成香】(なりきょう)、桂馬は【成桂】(なりけい) 、銀将は【成銀】(なりぎん)と、それぞれ金と同じ働きをします。金将は【金】でそのまま、角将は【馬】で王将の本来の動きに加えて角将と同じ働きを、飛車は【龍】となって玉将と飛車の働きをする事が可能になります。」
 「ただしここで持ち駒は敵陣に打った後、一手動かさないと成る事ができねぇ~し、成ると元の駒の能力を失っちまうから、ある意味動きが制限される。で、だ・・・駒の特性を生かす為にも、成る成らねぇはその必要に応じて選択できる訳だ。」
 その時、今までファルマンの説明通り駒の動きだけを示していたブレダが、ポーカーフェイスを装いながらもその実ドキドキとした奇妙な胸の高鳴りを意識しながらそう説明を加える。
 「・・・要は如何に駒の性質を理解し、それを上手に、しかも有効に活用するか ――― それが、勝敗の分かれ目ですね?」
 ファルマンの説明を聞き入っていたダイアン准尉は、説明が始まってからと云うものの手元に集中していた目線をそこで初めて上げると、向かいに座るブレダに向ってこれまたニッコリと蕩けんばかりの笑顔を見せ・・・その瞬間、思わずブレダはその笑顔から視線を慌てて逸らせた。

 ( ぜって~、ヤバイ!! ――― しっかりしろ、俺!! 相手は俺と同じ『男』だぞ!?)

 しかしそんなブレダの心の声を知ってか知らずか、当の青年がその笑顔の下で、既にその明晰な頭脳をフル回転させながら、今までの説明で得た情報を元に戦略を立て始めている、と云う事に気付く者は誰もいなかった。

☆  ★  ☆  ★  ☆  ★  ☆  ★  ☆

 その後、禁じ手などの詳しいルールについては、勝負を始めてからその時々の盤面を見てブレダが説明を加える ――― と云う形式を持ちながらゲームが始まった。
 ゲームの第一戦では、彼の准尉は勿論ブレダ少尉の相手には全然ならなかったが、駒の動きに関してはどうやらしっかりと把握している様子が、傍から見ているファルマンにも分かった。
 そして第二戦目に入ると、成る程『チェス』がそれなりに強い、と言うだけありダイアン准尉はその呑み込みの速さを垣間見せる勝負強さを見せ ――― それでも、やはり負けた。
 しかし第三戦目に入ると、盤面上では明らかにブレダ少尉が勝ってはいたものの、ダイアン准尉の次の一手を待つ同僚の態度がおかしい事にファルマンは気が付いて首を傾げた。
 何故なら、ファルマンがこれまで知るブレダの癖の中で、唯一彼が何かに焦りを感じた際に見せる『それ』が、今の少尉の、対戦相手からは見えない机の下の手元で行われていたからである。
 ――― ただしその数分後には、ブレダ少尉が再び勝ちを収めてはいた。 
 そして第四戦目 ―――

 ブレダは第三戦の際、表情にこそ出しはしなかったがその実、内心ではかなり焦っていた。
 それは将棋を始めたばかりと云う、時折目の前でまるで無邪気で少年のような幼い雰囲気を垣間見せる青年が打つ一手一手が、次第に鋭さを見せながらブレダの築いた陣地の要所要所を的確に攻め出して来ていたからである。
 呑み込みが速い・・・とは言っても、普通はここまで辿り着くには『将棋の全て』と云う本を丸暗記に近い状態で知っているファルマンでさえ、3週間近く掛かったのだ。それを目の前の准尉は、第三戦目でありながらもう既に追い越そうか、と云った勢いである。
 しかも第四戦目にして次第に、ブレダはヤバイかもしれない、とかなり勝負に対し真剣に成りかけていた。
 そして、その次の一手が、この一局の勝敗を左右しかねない、と云う場面になったその時 ―――

 「お~い、フィル。そろそろ時間だぞ~?」 

 と ――― 談話室の入り口から、燃える様な赤い髪の少尉が、ダイアン准尉に向って呼びかけて来た。
 「あっ、ヘインズ少尉!」
 途端に真剣な表情で盤面を睨んでいた准尉が、パッと表情を明るくして立ち上がった。
 ヘインズ少尉、と呼ばれた相手は、そこでブレダとファルマンの視線に気付くと、微かに口許に皮肉な笑みを浮かべ、それが挨拶の代わりであるかの如く軽く二人に向って頷いて見せた。
 「すみません、ブレダ少尉。なんか、時間になっちゃいました・・・勝負の途中ですが、ここで失礼しますね。」
 あまり友好的とは言えない表情の少尉とは違い、ダイアン准尉は心の底から申し訳なさそうな表情を浮かべながらブレダとファルマンに丁寧に頭を下げると、自分を呼んだ少尉の下へ行こうと踵を返した。
 「ダイアン准尉!」その背中に、呼び止めるようにブレダは声をあげた。そして、はい? と云った様子で振り向いた准尉に、ニヤリと笑いかけると言葉を継ぐ。「この勝負、俺の次の一手を『封じ手』にしておく・・・だから、このつづきをまたやろうぜ。」
 ブレダのその申し出に、彼の准尉は驚いた様子で、えっ? となった後、少ししてからにっこりとお日様のような笑顔を見せてから「はい、少尉!よろしくお願いします♪」と、ぺこりと頭を下げるとその場をあとにした。

 「ファルマン、そ~ゆ~訳だからよ。悪りぃがこの棋譜、次まで憶えておいてくれや。」
 「分かりました、少尉。」

 しかし自分を待つヘインズ少尉を振り返ったその背後で、彼はブレダからファルマンへのその声かけをしっかり耳に収めると、その事実さえをも敬愛する上司からはカメラの様な記憶力、と言わしめた記憶の中に記録として残すかのように目を閉じた。
 そして幼さすら残す面差しの中で、その口許には今までのそれとは明らかに違う冷たい微笑が刻まれていた。

☆  ★  ☆  ★  ☆  ★  ☆  ★  ☆

 「 ――― しっかし・・・色々とヤバかったな、今の勝負。」

 西方司令部の少尉の『なんだお前、遊んでもらってたのか?』と言う声と『ええ、凄く楽しかったですよ♪』と嬉しそうにそれに答える准尉の声が遠ざかり、再びファルマンと二人きりで談話室に取り残されたブレダが、手元の駒を片付けながらため息混じりにそう零す。
 「そう言いながら、自分は久しぶりに本当に楽しそうな貴方を見た気がしますが?」
 しかし上官の零した呟きに対し、ファルマンはクツクツと如何にも楽しげな笑みを洩らした。そうして、気まずそうに顔を顰める上官に対し、追い打ちをかける様にもう一つの事実を告げる。
 「 ――― それにしても、あの准尉も流石は3年連続で『チェス』の学生チャンピオンだっただけの事はありますな。」
 そして告げられた事実が及ぼすその効果は、まさに彼の予想通りのものとなった。
 「はぁっ?『チェス』の学生チャンピオン? ――― なんだって~~!? おい、ファルマン! お前、初めからそれを知ってたのかっ!?」
 「いえ、いえ、まさかそんな事はありませんよ、少尉。自分も途中で思い出しただけですから、そんなに詰め寄らんで下さい。」
 盛大に息を呑んでから、自分に詰め寄ってくる上官に対し、ファルマンは押し止める様な素振りを見せ頭を振った。それから思い出すかのように顎に手を掛けると、中央でヒューズ少佐の手伝いをしていた頃の記憶を手繰り寄せるように話を始めた。
 「確か・・・今年の一般のトーナメントでは、決勝戦で敗退はしましたが、その勝敗も彼の棄権によって決まった様なものでしたな。しかもその棄権の理由が、その日に大切な任務があるから出場は辞退する、と云うものでした。」
 「おい、おい。辞退の理由に、任務云々は拙いだろ!?」
 「・・・ですな。それが原因で、その准尉は中央から地方へ転属させられたと聞きます。」
 ファルマンがそこまで話すと、ブレダが、そうだろうな、と云った様子で腕を組んで唸った。しかしファルマンの話は、そこで終わった訳ではなかった。
 「 ――― とまぁ、表向きには発表されていますが、この発表には裏がありまして・・・」
 「裏だぁ?」
 「はい、そうです。ただその当時、流石にあの准尉がその事実を知った上で一枚噛んでいたのかどうかまでは確証がありません。しかしその洩れた情報を餌に、軍が敵を出し抜いた・・・と云うのが事の真相です。」
 ファルマンが告げた情報に、ブレダが再び沈黙した。
 そして腕を組んだまま、熟考すること数分 ――― 漸く彼は半眼のままで、ファルマンに自分の考えを告げる。
 「 ――― もし『あいつ』が事実を知った上で一枚噛んでいたとすると・・・中央からの転属も、地方への左遷、と云うより実は栄転ってやつかもしれねぇ~な。」そうして、自分の考えに頷く同僚にブレダはニヤリ、と人の悪い笑みを向けて続けた。「さっきの勝負にしても、一戦目と二戦目は兎も角、三戦目の勝敗の分かれ目は『あいつ』が駒の性質を『チェス』のそれと混同した所為だったからな。でなけりゃあの勝負、将棋を始めて間もない相手に、この俺の方が負けてたぜ? ――― ああ、まったくよォ・・・信じらんねェが、次は本気を出さねェ~とマジで俺の方がヤベ~ぞ。」
 本来ならば、頭を抱えて焦り出しそうな事実を、まるで他人事のように淡々と語るブレダの口許が嬉しそうに・・・そう、心底嬉しそうな笑みで歪むのを、ファルマンはまるで祝福するかのように微苦笑を浮かべながら眺めた。

 ――― 本当に・・・貴方のそんな生き生きとした表情は『初めて』見ましたよ。本来、貴方の様な頭脳の持ち主が持つべき者は・・・最強のライバル・・・なのかも知れませんな。

 そんなファルマンの思いを知ってか知らずか、ブレダは『さ~て、午後の仕事でもさっさと片付けるか♪』と鼻歌交じりで談話室を後にした。

☆  ★  ☆  ★  ☆  ★  ☆  ★  ☆

 そして、翌日の昼休み ―――

 「お~い、准尉。昨日の続きを始めようぜ♪」
 ブレダは食堂を出た所で、紅茶色の髪をした目当ての准尉が何やら慌てた様子で、廊下をパタパタと走り去ろうとする、その後ろ姿に目を留めて呼びかけた。
 「あっ、ブレダ少尉!」ブレダに呼ばれた青年は、その声に足を止めると困った様な笑みを浮かべて彼を振り返った。それから、申し訳なさそうに顔の前で手を合わせると、頭を下げる。「 ――― すみません、少尉。実は将軍に呼ばれてるんです!」
 「ハミルトン中将に?」
 ブレダが、ん~? と云った様子で首を傾げると、アールグレイの色彩を纏った彼の准尉は、更に困ったような表情を浮かべた。
 「いえ、イシス中将に、じゃありません。こちら-東方-の将軍の方です・・・実は『チェス』の相手をして欲しいって、その将軍からの直々のお達しで・・・本当にすみません! ――― あの続きは、そのうち絶対にさせて頂きますから・・・今はこの辺で失礼します!!」
 「あ、ああ・・・」
 その時ブレダは、自分の目の前から廊下の彼方へと走り去り、小さくなっていくダイアン准尉の後ろ姿を唖然とした様子で見送るしかなかったが、状況を段々と理解するに従いがっくりと肩を落とした。
 「 ――― どうやら、将軍の『チェス』のお相手に選ばれたらしいですな。」
 そのブレダの哀愁すら漂う背中に、いつの間にか現れたファルマンが淡々と事実を告げる。
 そう、彼の青年が将軍の『チェス』の相手に選ばれた、と云うことはイコール視察期間中は絶対、あの将軍がその『チェス』の相手を決して手離さないだろう・・・と云うブレダにとっては最悪の ――― 過っては自分も経験した事がある ――― 暗黙の事実が広がっていた。
 そして・・・

 「ちっきしょ~~~!!俺もやりてぇ~ぞぉ~~~~!!!!!」

 ブレダのその絶叫を、ファルマンはヤレヤレお気の毒に・・・と云った様子で両耳を塞ぎながらやり過ごした。

                  『西方の魔女』第七章 ~頭脳ゲーム~ 終 2004.09.22.脱稿

『あとがき』と云う名の言い訳

 如何だったでしょうか? 東西頭脳対決は、一応ブレダ少尉の勝利に傾きましたが、多分あのまま続けてもそう簡単にダイアン准尉がブレダ少尉に勝てるとは流石に華月も思ってはおりません(笑)。
 と、云う訳で...イシスさんがダイアン准尉を「連れて来た目的」であり、「是非やって欲しい事」とは、ロイ・マスタング大佐の部下の「個人評価」をだすこと、と云うことになります。
 因みに、次回お届け予定の第八章では、イシスさん本人が「大佐」の「個人評価」を行う予定となっております。
 まぁ、この東方視察編の中でも、最大の山場な訳で...ええ、滅茶苦茶長いです。多分、前・後編としてアップすることになるでしょう。
 なにしろ、イシスさんの「秘密」にも触れる事になりますからね。

    http://webclap.simplecgi.com/clap.php?id=isisu


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2007-07-15 07:07  nice!(0)  コメント(0) 
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