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『鋼』でヒュハボ FULL MOON ~満ちる想い~ [二次創作SS]

お月見(←この記事は9月下旬にアップしました)の時期、と云うことで...満月に因んだヒュハボSSをご披露しましょう。
ヒュハボな作品群の中では、割りに初期に発表したものなので、華月にとっては結構お気に入りな作品です。そして、前回ご紹介したSS『A darling moon』につづく『MOONシリーズ』の二作目でもあります。

            ふと空を見上げれば、そこ在るのは見事なまでの満月
                   それは今の自分の想いに似ている     
  ――― ただ、今の自分の中にあるそれは満ちる事はあっても、決して欠ける事はない月・・・

興味にある方は、続きを読む、からどうぞ♪




 ―――― ああ・・・こんな関係がいつまでもつづけばいい・・・

  
                     それは、蒼褪めた光を放つ月が綺麗な円を描いた夜の出来事 ――――

  

              FULL MOON ~満ちる想い~


 「よっ、ハボック!」
 
 聞き慣れたノックの音にドアを開けたハボックは、そこに片手に紙袋を抱えたヒューズの姿を認め、途端に苦笑を浮かべる。
 「また、宿代わりにしに来たんスか?」

  ――― 『あの日』以来、突然自分を訪ねてくるヒューズには慣れていた。

 そのため、ハボックは自分が投げかけた問いかけの答えを聞かないうちに、ヒューズを中に招き入れるようドアから脇へ身を引く。
 「まあな。」
 しかしハボックのその問いかけに、にやりと笑ったヒューズは、それでも戸口に佇んだまま中へは入ろうとしない・・・そのためか、思わず小首を傾げるような仕種を見せたハボックの姿に、ヒューズの口許の笑みが深くなる。
 「・・・だが、まあなんだ。ちょっと付き合え、ハボック。」
 そしてヒューズは、何かを企んでいるような表情のままそう言うと、ハボックの答えも確かめずにその腕を掴んで外へと引っ張り出す。
 「わわっ、中佐!?ちょっと待ってくださいよ~?」
 こういう時のヒューズに逆らったところで、ソレは無駄な足掻きだと云うことは、ハボックも今までの経験から既に分かっていた。だからこそ、無理な姿勢から腕を掴まれてバランスを崩しかけながらも、ハボックはそれ以上ヒューズには何も聞かず、慌ててズボンから鍵を取り出した。

 ヒューズはハボックが戸締りを終えたことを確認すると、ハボックが自分の後を付いて来るのは当然の事、と云うように先に歩き出す。
 そんなヒューズの後ろ姿に、ハボックはやれやれといった風情で肩をすくめると、その隣りに並ぶべく小走りになって後を追う。
 一体何がそんなに楽しいのだろうか?・・・と、漸く追いついて、鼻歌交じりで歩くご機嫌なヒューズの横顔をチラリと盗み見てから、煙草を取り出そうとしたハボックは、そこでハタと手を止めた。
 「・・・あ~・・・(汗)」
 ――― そう煙草を入れていた上着は、居間の椅子に掛けたままでここにはない。

 「ほらよ。」
 その時、思わす肩を落としかけたハボックに、ヒューズがポイッと何かを投げて寄越す。
 「っとと・・・!?」
 ハボックは、慌てて『その何か』を両手でキャッチした。

 手の中のソレは封の開いた煙草の箱・・・銘柄はヒューズのお気に入りで、今やハボックには吸いなれたソレ・・・

 タイミングよく渡されたソレに、ハボックは顔を綻ばせるとズボンのポケットから銀色のジッポを取り出し火を点ける。
 「中佐も要ります?」
 そう言って箱を返そうとすると、ハボックの方へ伸びてきたヒューズの手が、その口元に咥えられた煙草をヒョイと抜き取り・・・なんの躊躇いもなく、ヒューズはそのままソレを自分の口に咥えた。
 それを見たハボックは、思わず自分の頬が熱くなるのを自覚しながら、それでも新たに煙草を取り出すとその先端に火を点けた。

 会話らしい会話もなくただ並んで歩くヒューズとハボックを、月明かりが優しく照らし石畳の道に2人の影を長く伸ばしていく ―――  ハボックはその影をぼーっと見遣りながら、自分は今どうしてヒューズとこうしているのだろうか・・・と考えていた。
 時折、大佐に会いに中央からわざわざ東方司令部に顔を出すヒューズが、軍の宿泊施設ではなく ――― ましてや親友である大佐の家でもない ――― 自分の家に泊まるようになったのは『あの日』・・・酒に酔ったハボックがヒューズに自分の素性を明かしてしまった時からだった。
 今思えば、どうして自分は口を滑らせてしまったのだろうか・・・と歯噛みせずにはいられない。
 そう・・・『あの日』の事さえなければ、自分はこんな中途半端な思いなどしなくてすんだはずなのに・・・!!

 ハボックにとって、ヒューズとのこんな関係は、決して厭なものではない ―― 否、むしろ幸せを感じる瞬間があるとすれば、こんな風にヒューズと共に居られる時だろうとさえ思う。
 しかし同時にそれは、求めてはいけない何かに否応もなく直面させられる瞬間でもあった。

 「どーした、少尉?」
 思わず自分の想いに気をとられていたハボックは、ヒューズの問いかけにハッとして立ち止まる。
 気が付けば、周りの風景は街のそれとは違っていた・・・どうやら街外れの丘の上まで来ていたらしい。
 「すみません、考え事をしてただけっスよ・・・それよか、どーしてこんなとこまで来たんスか?」
 なだらかな丘の向こうを見渡せば、小さな灯りがポツポツと見えるだけで視界は暗い。
 「んあ?・・・ああ、なんとなく、な?」
 「はあ~っ?!」
 ハボックは呆れたように声を挙げてヒューズを見遣る。
 とんでもない発言をなんともない事のように言ってのけた当の本人は、ニヤニヤと腹の底が読めない・・・人の悪い笑顔を浮かべていた。
しかし、そのうち抱えていた紙袋の中をゴソゴソと探って目当てのものを取り出すと、ホイッとばかりにハボックにそれを投げて寄越す。
 その手の中に受けとめた『それ』に目を落とし、ハボックは思わず瞬きを繰り返す。
 「・・・ビール・・・?」
 「そっ、ビール。」
 ヒューズは自分も紙袋から同じように缶ビールを取り出すと、袋を脇に置いてその場に座り込む。そして、唖然としたままのハボックを尻目にプルタブを開け、ぐいっと一口中味をあおる。
 「う~ん、美味い。・・・ど~した、少尉?飲まないのか?」
 ハボックは暫し唖然とした様子で手にしたビールとヒューズとを交互に眺めていたが、やがてため息をつくとヒューズの横に腰を下ろしプルタブを開ける。
 そして、放り投げられたせいか勢いよく吹き出す泡に慌てて口を寄せると、一気に中味をあおった。

 ヒューズは喉を鳴らしながらビールを飲み下すハボックの、その端正な横顔を見守りながら、いつの間にかこうしてハボックと共に過ごす時間が、自分にとって打算ではない『意味のある時間』になっていた事に改めて気付かされる。
 ああ、だからだろうか・・・ハボックの自宅に向う途中で見上げた空に懸かる月を見た瞬間に、こんな風に一緒に外で酒を飲みたくなったのは?途端に胸の奥が、ポーッと温かくなるのを感じ、ヒューズは思ったままの素直な気持ちを口にする。

 「ホントの所はな、ハボック。今日は月が綺麗だったから、外でお前さんと一緒に飲みたくなったんだ。」

 ポツリと呟かれたその言葉に、ハボックは息を呑むと隣りに目を遣り・・・愛しげに目を細めるヒューズの柔らかい微笑みに出会う。
 「あ・・・」
 どう反応して良いのか分からず、固まってしまったハボックのその口許に残る泡をヒューズがそっと拭う。
 「まったく、昔からほんと手ぇかかるガキだな、お前・・・」
 ヒューズはそう言って笑うと、ハボックの髪をくしゃくしゃとかき回した。

 その手の温かさには覚えがある。

 ・・・勿論、ヒューズの言う『昔』が『あの時』の事であることは、ハボックにも分かっていた。
 なによりも大切だった者を喪った『あの時』――― 空虚な自分の心を満たすように、なんの見返りもなく、ただ与えられたあの温もりを ――― 自分は今でも、決して忘れることなく覚えている。
 そうして、ハボックは再び気付かされる。
 自分がどんなに彼の人のこの温もりを求め続けていたか・・・と、云う事に・・・
 そう・・・自分を護ってくれたあの温もりを、大切な者を喪った絶望を超える糧となったその想い出を、そして日々溢れ出し止めることなど出来ないこの想いを、自分は決してなかった事になどできはしないのだ、と。

 ふと空を見上げれば、そこ在るのは見事なまでの満月 ――― それは今の自分の想いに似ている ――― ただ、今の自分の中にあるそれは満ちる事はあっても、決して欠ける事はない月・・・

 「本当に、今日は月が綺麗っスね?」

 漸くハボックの口をついて出た言葉は、他愛もないただの相槌だったが、ヒューズはニヤリと相好を崩すと紙袋から次々とビールを取り出していく。そうして、当然のことのようにハボックの肩を抱くと宣言する。

 「おうっ!さ~飲むぞ、少尉!」
 「いいっスね、中佐。」

 ハボックがにっこり笑ってそう答えを返すと、ヒューズもまた満足そうな笑顔を向けてくる。

 そう、こんな関係がいつまでも続けばいい・・・ ――― 自分はこの人を求めたり望んだりしてはてはいけないのかもしれない・・・それでも、こうして彼の人が与えてくれる笑顔と温もりに満ちた安らぎを否定する必要はないのだ。


 ――― 月が自分を肴にビールを空けていく2人を優しく照らしていく・・・


 ・・・ああ、こんな夜も悪くない・・・そう思わずにはいられないハボックだった。


                               FULL MOON ~満ちる想い~ END.       

             2004.3.21 脱稿   2004.5.24. 一部改稿   2004.6.18. 再稿



                          『あとがき』と云う名の言い訳

如何だったでしょうか?
華月の書くSSの中では、結構まともなシュチュエーションなんじゃないかと思うのですが...
まだまだヒュハボ?な関係の二人ですが、華月的にはこの微妙な関係が好きだったりする訳です。
因みに、作中の『あの時』とハボックが『喪った大切な者』は、華月の捏造過去設定です。
実は『西方の魔女』にも通じるモノがあるのですが、この時点ではそれほど掘り下げてはいませんでした。ただし、今後もこの設定を引き摺ったストーリー進行なので、頭の隅にでもメモしておいて下さい。
次回は、『Back to back』を配信予定です。ここから二人の関係が急展開!?な模様です(爆)。

      http://webclap.simplecgi.com/clap.php?id=isisu 

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     12月24日、お礼SSS(3件)を更新しました!


2007-09-01 12:21  nice!(0)  コメント(0) 
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