So-net無料ブログ作成

『西方の魔女』東方視察編:8 後編 [『西方の魔女』]

お待たせしました!『西方の魔女』第八章 ~ Break Point :後編 ~ の登場です。
前回、思わせぶりなところで、To be continued ...な状態で終了しましたので、出来ましたら
前回の流れ(前編)をお浚いの上、興味のある方は『続きを読む』からどうぞ♪


錬金術の基本は 『等価交換』 であり
人はそこから何かを得ようとする時『同等の代価』 を必要とする・・・
ならばコレが 『同等の代価』 の結果なのだろうか?

その時、目の前で見慣れた筈の ――― しかし明らかに何かが違う ――― 錬成反応は起きた

『西方の魔女』第八章 ~ Break Point :後編 ~

 それは、ほんの僅かな・・・そう、針穴ばかりの小さな変化から始まった。
 そして・・・ピシリ、と小さな音がして、堤防の外壁に小さな亀裂が生じた。
 しかもその小さな亀裂は、描き出れた練成陣と共に添えられたナイフを基点として、まるで何かの力に増幅されたかの如く、見る見るうちに微小なひび割れとして堤防の外壁全体へと広がっていく。
 やがて、その『変化』があらゆる部分に浸透した、と思われた次の瞬間 ――― ひときわ禍々しい真紅の錬成光が堤防に生じた亀裂の中を、凄まじい勢いで駆け巡っていき ――― つい先程まで、彼らの目の前に聳え立っていた筈の強固な堤防は、それこそ一瞬のうちに錬成される以前の、砂の粒子にまで分解されていった。

 「 ――― 貴女も、錬金術師だったのか・・・!?」  
 ロイは見慣れぬ錬成反応と共に、砂塵となって崩壊していく過っての堤防を背にして、その崩壊に巻き込まれない範囲まで難なく逃れてきたハミルトン中将に驚きの視線を送りながら、そう呟くと無意識のうちに、その場から一歩後退していた。 
 「私は・・・“違う”よ。」

 しかし彼女は眉間の皺を深くすると、まるで拗ねているかの如く不機嫌な様子で、ロイの問いかけをきっぱりと吐き捨てるようにして否定した。 
 「しかし、あの錬成反応は・・・!?」
 彼女の答えに、ロイが尚も言い募ろうとするとを見て取ると、中将はその口許に苦笑いを浮かべた。
 「あのねぇ、大佐・・・私は『錬金術師』じゃあないよ。でもね、だからと言って、使えない・・・なんて事は一言も言っていない。」彼女はそう言い放つと、今度は肩を竦めながら言葉を継いだ。「それに本来なら『錬金術』を使える者、イコール『錬金術師』である、って云う訳じゃあないし。その事を君に詳しく説明するのは今更・・・だよね?だいたい『錬金術』なんてものは・・・ ――― 」
 ハミルトン中将は苛立ちを含んだ声でそこまで言ってから、いや、こんな事を錬金術師の君に言っても仕方がないか、第一興味ないだろ?と、言葉を切った。
 ロイは彼女の言い分に大変興味はあったが、それ以上に彼女が先程使ってみせた『錬金術』についての、どうしても気になる事実を先に解決することにした。
 「それにしても、中将!貴女は何ともないんですか!?」
 「・・・なにが?」
 勢い込んでそう尋ねたロイに対し、当の中将は不機嫌そうな様子から一転して、パチクリと瞬きすると小首を傾げてみせた。
 「なにが・・・って、中将!?今の錬成では、明らかに『再構築』の過程での強制終了が成されたはずです!!・・・ならば『リバウンド』は!?」

 ――― 『リバウンド』と・・・ロイが焦燥にも似た思いに駆られながらそう言った瞬間、イシス・ハミルトン中将の表情が・・・変わった。
 そう、彼女はあの時、錬成の過程である『分解』の段階で錬成を止めた訳ではなかった。それならば、ロイとてこんなに焦りはしなかっただろう。 ――― しかし、彼女が先程止めたのは錬成に於ける一番の要である『再構築』の過程・・・それが、どんなに危険な事態を招くのか・・・と云うことは、錬金術の基礎を知る者ならば誰でも知っている。 しかもその事態の危険性を示す実例は、既に彼らの目の前で実際に起きていたではないか? ――― そう、あの哀れな錬金術師の腕は・・・『液化』したのだ。

 「そうか・・・ ――― 目聡いね、マスタング大佐。止めたの・・・分かったんだ。」
 やがて彼女はゆっくりと詰めていた息を吐き出すと、こ~ゆ~時は一体何から話すべきかなぁ? と、軽い口調でそう言うなり、これからのロイとのお喋りを楽しむかの如く微笑んだ。 
 「 ―――『リバウンド』・・・かぁ。さて、どうなのかしら?」

 イシスは、どうやら本気で自分の身を案じてくれているらしいロイ・マスタング大佐を、嬉しそうに、しかし同時に物珍しそうな様子で見遣ると言葉を切った。そして、これから自分が話そうとしている真実が『ダイヤ』の努力によって、軍の中でも最重要機密として『封印』されている事を考慮に入れながら、それでも彼に告げるだけの意味はあるだろうか、と自問する。その結果は・・・分かりきっていた。

( 意味か・・・それならあるじゃないか。あの子が『護る』と決めた対象の一人として『彼』を定めたのなら、それにこそ意味がある訳だし・・・私も大概あの子には甘いからな。)

 イシスは自嘲の笑みを浮かべると、目の前で彼女の身を気遣かわし気に窺う相手に真実を告げることを決めた。
 「あのねぇ、大佐。目には見えない形でだけど、実際『リバウンド』の結果とも取れる現象が、今も私の身に起きているのは確かだよ・・・ただそれって私の場合で調べた限り、どうやら【マイナス面】にではないらしい。だから私的には別に嬉しくもなんともないけど、その結果はこと錬金術の分野では『奇跡』と呼べるものらしい。」
 イシスはそこまで言って言葉を切ると、ロイの顔色を伺った。そして、そこに訳が分からない、と云った表情を見て取ると、仕方ないなぁ・・・でもこれは皆には内緒だよ? と前置きして、片目を瞑って見せると話をつづけた。
 「 ――― う~ん、つまり私にとって目に見える形での『リバウンド』と云えば、その原理を説明するのがちょっと難しくなるけど・・・『コレ』をする様になってからというもの、私の外見がその当時から変化しなくなった・・・ってことくらいかなぁ?」
 イシスはその特異な事実を、まるで明日の天気でも話すかの如くあっさりとした口調で告げた。その事実があまりにも自然な口調で語られた所為だろうか? ――― ロイからの反応は何もなかった。
 そこでイシスは、尚も付け加えるように今でも『封印』され続けている真実を、何でもない事のように告白した。
 「 ――― なんでも身体の基礎代謝の方も、普通とは違うらしい。それに・・・特異な代謝機構が働いて表在細胞の活性化が起きるようになっているらしくて、古傷以外は余程の深手じゃない限り簡単に治るしね。」

 「 ――― !?・・・その現象は、所謂『不老不死』と同義なのでは!?」

 その時になって初めて、彼はイシスから告げられた事実の意味するものを理解したのか、彼女の姿をマジマジと凝視しながら、明らかに血の気が引いた様な表情でそう問いかけてきた。
 「・・・う~ん、ちょっと違う気もするな、それ。だってそれが起きるのは、厭くまでも表面上だけなんだし ――― でもまぁ『不老』と云った意味で言えば、20年来の私を知る者なら・・・或いはそう捉えるかも知れないな。」
 最早ロイが言葉もなく唖然とした様子で見守る中、彼女は自らの『不老』の可能性について語りながらも、微かにその口許に自嘲の笑みを上らせた。
 しかし、次の瞬間にはその口許を引き締めると、ガラリと口調を変えて言葉を継いでいく。 

 「それでも、結局のところ錬金術は【魔法】ではなく【科学】だ。万能ではない。それ故、一連の原理や法則を理路整然と正し、構造を『理解』した上で、初めて『分解』『再構築』を可能とし『錬金術』として正常に機能するようになる。そしてその基本は『等価交換』であり、そこには常に『同等の代価』を必要とする ――― と・・・まぁ、そう云ったモノである事は、国家錬金術師でもある君なら知っているはずだ。」

 彼女はそこで言葉を切ると、私のいま言ったこと、合ってるよね? と云った様子で小首を傾げた。それから今度は練成陣を刻む為に使用した ――― 柄の部分に、何やら凝った紋様が無数に彫り込まれた ――― 『愛用のナイフ』に視線を落すと、その表情を和らげ・・・微笑んだ。

 「 ――― だから、私の『コレ』は『錬金術』とは呼べないし、その結果もまた偶然の産物でしかない。その原理を正確に理解する事ができない使い手が、それを他のモノ、ましてや人間に応用する、なんて事は無謀を通り越して危険でしかない。まったく・・・実用的ではないモノを、君だって見本には出来ないだろう? ――― その上、実際に私と同じ様な錬成過程を試した錬金術師が、そこから私同様の結果を引き出せたか・・・と云えば、答えは『否』だな。下手をすれば、それこそ先程の錬金術師のように『リバウンド』で命すら落しかねない。」 

 淡々とした口調でそう語るうちに、微笑を刻んでいた筈の彼女の口許が、気が付けば再び自嘲するかのように歪められていく。やがてそれは、見る者の心を締め付ける様な儚い笑みへと変化し・・・そして、消えた。
 「・・・ハミルトン中将・・・?」 
 ロイは目の前に佇む小柄で、やはり見た目通りであった、明らかに40代半ばではない ――― 20代後半の頃だろうか? ――― 彼女の姿を何故だか痛ましく感じながらも見守った。

 「 ――― そう、錬金術の基本は『等価交換』だ。なら私の『コレ』は本当に『錬金術』って言えるのかな?・・・それに『同等の代価』だろ?・・・確かに、私が失った『モノ』を羨ましがる輩も存在はするけど、この結果が本当に『同等の代価』に見合ったモノだと、君にはそう言えるのかな?『焔の錬金術師』君。」

 彼女はそう言って、ロイに鋭い視線を投げかけた。
 その時になって漸く、ロイはハミルトン中将が何故ここまで饒舌に、自らの秘密を自分に告げたのかを、朧げながらも理解した。そう、彼女が欲しかったのは『焔』の銘を持つ『錬金術師』としての自分の『答え』なのだと・・・ しかし、イシス・ハミルトンと云う『錬金術』の枠から大きく外れた存在に対し『答え』を与えられるほど『錬金術』の『理』を理解している『錬金術師』がいるだろうか? ――― 『答え』は否・・・だ。
 だが、或いは『彼』ならば・・・?

 「 ――― だから私は『錬金術師』なんかじゃないし『錬金術』は・・・ただ嫌いなだけだ。」

 自分の問いかけに対し『答え』を持たないであろう『錬金術師』から、イシスは視線を逸らすと、少しおしゃべりし過ぎたな? と、自分の言動を振り返り顔を顰めた。
 どうやらジャンが『護る』べき対象の一人として付いて行く、と決めた相手であると云う事に、気を取られ過ぎていたのかもしれない。
 これでは気は進まないが、少々キツメな手段を用いて口止めする必要があるだろう。
 となると、やはりここは・・・

 「ああ、それとマスタング大佐。」
 ロイが、ハミルトン中将の『答え』に一番近い場所に居るであろう『存在』に思い至ったその時、彼女が不意にロイの事を呼んだ。
 その呼びかけに、何事かと顔を上げれば「 ―――― 悪いけど・・・いま言った事は口外無用で頼む。」と、そう言った彼女の顔から、全ての表情が消えていくのがロイには見て取れた。
 そして、淡々とした口調で告げられた言葉は・・・

 「もし口外した場合は、君個人に留まらず君の親族及び友人、部下にも害が及ぶ・・・と ――― そう、取ってくれて結構だ。」

 ―――― ああ、成る程・・・やはり、そう来たか。
 予想通りの警告に、ロイは僅かに俯く様にして目を伏せると、思わずため息を吐きかけた。
 そして、ただそれだけの警告に止まるのであれば、ロイとて彼女の言葉を素直に受け止める素振りや、勿論そんな警告は自分には必要ないことだ、とそう答えを返すことも出来ただろう。しかし彼女の警告はそこで終わる事はなかった。

 「君の友人・・・確か同期にマース・ヒューズ中佐がいるだろう?」
 そうイシス・ハミルトン中将が告げた親友の名前に籠められた声音に、ロイは思わずピクリと反応していた。
 その名を告げる中将の声音に、いま確かに、殺気の様なものを感じたのは自分の気のせいだろうか?
 「 ――― 彼あたりが一番危険・・・かもな?」
 「・・・っ!? それは、脅迫 ――― ですか?」
 今の今まで、心酔に近い感情を抱きかけていた将官から、明らかな殺気を籠めて告げられた警告 ――― 否、既にそれは脅迫と言っていいだろう ――― に、流石にロイも気色ばんで顔を上げると、そのまま目の前の将官に詰め寄りかけ・・・次の瞬間、硬直した。
 何故なら、恐ろしいまでの殺気を身に纏っている筈のイシス・ハミルトン中将の顔に浮かんでいる表情が、あまりにも哀切に満ちた寂しげでものであると同時に、これ以上はないだろう、と云うほど美しいものだったからであり・・・
 「 ―――― いや・・・お願い、かな。」
 ・・・そう、呟く様に返された最後の警告が、決して命令ではなかったからだった。
 そして彼女は、ロイの顔に浮かんだ表情を見てとると、再び何かを諦めたような儚げな微笑みを浮かべ静かに目を閉じた。
 その瞬間ロイは、彼女が望まずに手にしたであろう『奇跡』と云う名の『モノ』と、その結果に対して彼女が支払ったであろう『代価』、更にはその『代償』として失われたであろう『モノ』とを思い、かけるべき言葉を失った。
 そう、彼女は明らかにソレによって、何か途轍もなく大切な『モノ』を失ったのだ ――――

 今にして思えば、この時を境にロイ・マスタング大佐にとっての『イシス・ハミルトン』と云う女性は、大いなる謎と明らかな矛盾とを秘めた『至高の存在』として、その後も永きに渡り彼の記憶の中に残る事となるのだった。
                『西方の魔女』~ Break Point ~ 終 2004.11.10. 脱稿


『あとがき』と云う名の言い訳

 うわ~っ!? どうするんだよ、華月!!
 とうとう、イシス中将がどうして40代半ばのはずなのにあんなにも可愛い ・ ・ ・ じゃなくて、若々しい外見を保っているのかを暴露しちゃう設定に錬金術を絡めちゃったよ!?
 因みに、華月なりの原理を説明すると、以下のようになります。
 スカーはその錬金術使用の過程に於いて 『理解』 『分解』 『再構築』 のうち 『分解』 で錬成を止めているけど、イシスは 『分解』 を経て、尚且つ 『再構築』 の過程でその錬成を止めています。
 つまり 『分解』 した分子が 『再構築』 に向かうはずのその過程で、無理矢理 『錬成』 を止める事によって、本来の行き場をなくした分子が結合できずに暴走し再分離する ・ ・ ・ それが爆発的な勢いで進行していくため、本文中の砂防は瞬時に崩壊したように見える ・ ・ ・ 訳ね?
 そして普通なら、そのリバウンドが身体に逆流し悪影響を及ぼした上で、新陳代謝すら暴走させる可能性を秘めているけれど、イシスにはその暴走が逆に 『プラス作用』 として働いている訳です。
 う~む、この辺は適当だし、書いた当人もよく分からないので、あまり突っ込まないでください(汗)。

 さて ・ ・ ・ 実は等価交換の先にある、それが生み出す結果( 『創造』 に留まらず 『破壊』 に至る事すらある ・ ・ ・ 例えば砂防のように )を唾棄するほど嫌悪しているイシス。
 何故なら、従軍し常に最前線を戦ってきたイシスが戦場で出会う 『錬金術』 は 『破壊』 の方が優先されているからで ・ ・ ・ だから一見矛盾しているのですが、イシュヴァールでの 『錬金術』 を使用した 『虐殺』 を、軍人としてのイシスは 『是』 としながらも、一個人としての彼女は 『非』 として捉えています。
 そして、外見上は 『不老不死』 を体現するように見えるイシスですが - 『内臓』 - つまり臓器年齢は本来の年相応です。つまり 『変化』 として認識されるのは、厭くまでも表面上のみ、と云うことです。
 しかも、それは 『ある時期』 を境に始まった現象になっています。でなければイシスの頬の古傷は表面細胞の活性化の際に、一緒に治るはずですよね? ――― そう ・ ・ ・ だから例えば、イシスの頬の古傷と同じ場所に、同じ様にナイフで傷をつけたとしても、治癒過程-表面細胞の活性化-ではその古傷は 『傷』 として認識されずに残ります。
 実はそれがある意味、イシスにとっては 『救い』 になっているのです。

 あと、本編の中で思わせぶりに登場した 『ナイフ』 ですが、アレはイシスの血統を証明する一つの 『証』 です。 その本来の持ち主は既に 『故人』 であり、イシスはそれをある戦の出陣時に 『お守り』 として 『故人』 から渡されました。しかし皮肉にもそれが、イシスにとっての運命の分かれ目だったりします。
 因みにこれは蛇足ですが、 『ハミルトン』 家の養子であるイシスの旧姓は 『ストーン』 です。後述しますが、本来なら代々 『水』 の流れを汲む 『流動体』 を扱う事を得意とする家系に、何故 『ストーン』 などと云う『石』 ・ ・ ・ つまり、明らかに 『固体』 を意味する家名がついたのか ・ ・ ・ それも謎ですね?
 あと、イシスは否定しましたが、彼女に錬金術師としての適性があるのも、元を正せばその家系に秘密があります。でもハボックには、その適性は受け継がれておりません。ある意味、それが 『あの時』 の悲劇に繋がる訳です。

    http://webclap.simplecgi.com/clap.php?id=isisu


 *面白かったよ?などの感想がありましたら、ポチリと上記をクリックして下さい。
   おまけのsssが表示されます。
   12月24日、Web拍手更新しました♪『西方の魔女』番外編です。


2007-09-01 01:01  nice!(0)  コメント(0) 

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証: 下の画像に表示されている文字を入力してください。

 
メッセージを送る

このブログの更新情報が届きます

すでにブログをお持ちの方は[こちら]


この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。

×

この広告は1年以上新しい記事の更新がないブログに表示されております。